グラム

グラム~神から授けられた英雄の剣グラム

グラムが登場するのは北欧神話「ヴォルスング・サガ」です。シッゲイル王がヴォルスング王の娘シグニューと婚礼の儀を行っていたところ、裸足の隻眼の老人(実は主神オーディンの変装した姿)が現れ、一振りの剣を残したそうです。これが後にグラムと呼ばれる剣だったのです。隻眼の老人はグラムを大木の幹に突き刺し、グラムを抜いたものをグラム自身が持ち主として選ぶと告げたのだといわれています。
婚礼の儀に参加していた数多くの者がグラムを抜こうと試みましたが誰も引き抜くことができず、グラムを抜いた唯一のものが、シグニューの双子の兄シグムントだったのでした。グラムを抜いたシグムントはその後、シッゲイル王の裏切りや一族たちの死を乗り越え、グラムを携え王として戦い続けたそうです。しかしシグムントは、ついグラムを打ち折られ倒れてしまうのでした。グラムを打ち折ったのは、敵の兵士に変装した主神オーディンだったのです。オーディンは来る天上での最終戦争ラグナロクのために、英雄の魂を集めていたのでした。グラムを与えたシグムントに手柄を立てさえ英雄とし殺したのです。シグムントは折れたグラムをまだ生まれる前の息子に託し自らの死を受け入れたのでした。グラムを託された子はシグルドと名付けられ、鍛冶屋レギンの下に預けられたのでした。

やがてグラムを託されたシグルドは成長し、養父であるレギンから、レギンの兄ファーブニルを倒して欲しいと頼まれます。ファーブニルは財宝に目がくらんで父を殺した後、魔法によって竜に姿を変えてその財宝を守っているのでした。
ですが普通の剣ではシグルドの力に耐え切れず折れてしまい使い物になりません。そこでシグルドは父シグムントの形見である折れたグラムを鍛冶屋であるレギンに鍛え直してもらうことにしたのです。鍛えなおされたグラムは、以前にも増して切れ味を増し素晴らしい剣に仕上がったといいます。グラムを川に垂直に立てれば、流れてくる毛糸や羽毛がグラムの刃に触れただけで二つに分かれてしまうほどでした。
シグルドはグラムを携え、まず父の敵を倒し、それからファーブニルの棲む岩山に向かいました。シグルドはグラムを携えファーブニルを打つ機会を狙います。ですがファーブニルは常に巣穴の中の財宝の上にいてなかなか隙がありません。ファーブニルは水を飲む際に巣穴を一時離れることがわかったシグルドが、その通り道に穴を掘ってグラムを構え潜みました。その上をファーブニルが通った隙を突いて弱点であった腹にグラムを深々と突き刺し、グラムはファーブニルの心臓まで貫きました。そして見事にシグルドはグラムの力もあってファーブニルを倒したのでした。

シグムントとシグルド、二人の英雄の手にあったグラムグラムが名剣であったことは確かですが、二人の英雄の力もまた素晴らしかったのでしょう。英雄の手によって、グラムという名剣はその本来の力を発揮することができたのでした。

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