トライデント

トライデント~嵐を呼ぶ名高き海神の矛トライデント

トライデントはギリシア神話に登場する一つ目の鍛冶神キュクロプスが作り出した海神ポセイドンの矛です。鍛冶神キュクロプスはトライデントのほかに、主神ゼウスの雷てい、冥界の王ハデスの隠れ兜も作ったといわれます。
このトライデントを持つ海神ポセイドンは主神ゼウスの兄であり、大海原を統べる海神です。トライデントは嵐や津波を起こす力を秘めていたといわれています。

トライデントは直訳すると「三本歯」で、その名前のとおりトライデントは三叉の槍です。これは三権分立、三位一体といったものの象徴として、トライデントは多くの国家や企業でシンボルとして使われているようです。先端が三叉になっているトライデントは、もともと魚を捕獲するための道具だったそうです。また古代ローマの剣闘士たちの中にはレティアリウスと呼ばれる者たちがいて、このトライデントを模した武器と網を使い、魚の兜をかぶったムルミロ(魚闘士)とトライデントを用いて戦ったのだと伝えられているようです。トライデントは本来、漁師の象徴でもあったといわれています。

ポセイドンが持つトライデントは、単なる武器ではなく不思議な力を秘めていたといわれます。
あるとき、海神ポセイドンは戦の女神アテネと都市アテナイ(現在のギリシャ首都アテネ)の支配権を争うことになります。この時に女神アテネは住民にオリーブを贈り、海神ポセイドンはトライデントを大地に穿ち塩水の泉を沸かせました。アテナイの住民たちにどちらかを選ばせることになりましたが、彼らは女神アテネのオリーブを選びます。これに怒った海神ポセイドンは、トライデントを使ってアテナイに洪水を引き起こしてしまったといわれています。
トライデントは海神ポセイドンの手によって、水にまつわる奇跡を起こす神秘の道具として描かれていたのです。

ポセイドンは馬に関わりの深い神でもあり競馬の守護神でもあるようです。またトライデントは馬の飼い葉をあげるときにもつかったのだといわれます。

ポセイドンのトライデントが最大の力を発揮したのは、ティターン族との戦いである「ティタノマキア」だと思われます。最初から存在していたといわれる数人の神を除けば、ほとんどの神はウラノスとガイアの血を引きますが、クロノスらティターン族と、そのクロノスの子であるゼウスらを筆頭とするオリュンポスの神々たちは覇権を争います。神々は不死であったために戦いは長引きました。
この戦いの際、ポセイドンはトライデントを持ちゼウスを支援してクロノスを討ち取るのを助けたといわれてます。ですがその後も神々の覇権争いは終わることなく続き、ポセイドンも海だけの支配者であることを不服とし、地上の支配権をめぐって争いました。ポセイドンはもともと大地と地震の神だったのですが海に追いやられてしまったという説もあるようです。

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