ミョルニル

ミョルニル~雷神がもつ最強の巨人殺しのハンマーミョルニル

ミョルニルとは「打ち砕くもの」を意味するハンマーです。ミョルニルは北欧神話の神トールの持ち物とされ、ミョルニルは数々の敵を一撃の下に葬ったそうです。
ミョルニルを天に掲げれば稲妻を呼び、ミョルニルを敵に投げつければ百発百中の命中率をほこり、ミョルニルは自ら必ず手元に戻ってくるといいます。ミョルニルを用い、トールは巨人族との戦いの中で大活躍したとされています。またミョルニルは、使用しない時には小さくなり懐に収められるようになるそうです。

ミョルニルを造ったのはドワーフといわれているようです。ある時、北欧神話の中でも異彩を放つ神ロキは、悪戯でトールの妻シヴの髪を刈ってしまったそうです。これに対しトールは非常に怒り、元の髪と同じような髪を黄金で作れとロキに迫ります。
そこでロキは、細工物の作成を得意とするドワーフたちに黄金の髪や宝物の作成を依頼したといわれます。そしてドワーフたちは、見事に黄金の髪を作り上げ、同時に魔法の船とグングニルという魔法の槍も完成させたのでした。
悪戯好きなロキはここで思いつき、ブロッグとエイトリという別のドワーフの兄弟にこう持ちかけます。
「この三つと同じような宝を君たちは造ることができるか?」
ロキはこれに自らの首を賭け、ブロッグとエイトリはこの賭けを受けたのでした。
そしてハエに姿を変えたロキに邪魔されながらも、ブロッグとエイトリは黄金の猪、魔法の腕輪ドラウプニル、そしてミョルニルを造り上げたのです。ミョルニルの柄は、ロキの妨害を防ぐために短く造られましたが、大きさが変幻自在であるミョルニルは、なんら不便はなかったようです。
審判の結果、ブロッグとエイトリの造ったミョルニルなどの宝は、先のドワーフが造った宝となんら遜色ないとされたのです。さらにミョルニルはこのドワーフの競作のなかでもひときわ優れたものだとされたといいます。こうのしてロキは賭けに負けましたが、狡猾な言い逃れで首を差し出すことから逃れたのだそうです。

ミョルニルは武器としても優れていましたが、ミョルニルはそれだけではなかったといいます。ある時、トールの乗る戦車を引く二体の山羊の死体にミョルニルを振りかざしたところ、二匹の山羊はミョルニルによって蘇ったそうです。

ミョルニルを語る上ではずせない二つの秘宝があります。ミョルニルを振るう力を何倍にも高める「力帯」と、ミョルニルをつかむ為に必要な「鉄手袋」です。
ミョルニルを振るい数々の巨人の頭を叩き割ったトールでしたが、この二つの秘宝がなければミョルニルを使いこなせなかったともいわれるようです。


ミョルニルがある時、盗み出されたことがありました。どのようにしてミョルニルを盗み出したのかは明らかではありませんが、巨人の王スリュムがミョルニルを盗み地中深くに隠したのです。巨人の王スリュムは、ミョルニルを盗みその返還の代償として美女と名高い女神フレイヤを花嫁に貰い受けるために、ミョルニルを盗んだのでした。
この条件をプライドの高い女神フレイヤは受け入れず、神々はミョルニルを取り返すにはどうしたらいいか思案しました。そこで聡明と名高い神ヘイルダムは、一計を案じます。それは「花嫁衣裳に扮したトールが自らミョルニルを取り返しにいく」というものでした。
最初はそれをしぶったトールでしたが、説得により受け入れ、口が達者なロキを侍女として伴い、スリュムの下へ出向いたのでした。ロキのサポートによりスリュムを騙し通すことができ、いよいよ婚礼の儀式となります。花嫁に扮したトールの膝元にミョルニルが置かれ、ミョルニルを手にしたトールは本性を現します。大切なミョルニルを盗み女装という恥までかかされたトールは怒り狂い、ミョルニルでスリュムを打ち倒し、さらに儀式に出席していた巨人すべてをミョルニルで叩き殺したといわれています。


ミョルニルを振りかざし多くの巨人族と戦ったトールですが、ミョルニルを持つトールもまた神々の最終戦争ラグナロクで命を落とします。予言により命を落とすことを知っていたミョルニルの保持者トールでしたが、因縁の敵である大蛇ヨルムンガルドと壮絶な戦いを繰り広げます。ミョルニルを振りかざしついには大蛇ヨルムンガルドを打ち倒すトールですが、彼もまたヨルムンガルドの毒に体を冒され絶命してしまいました。
世界が炎に包まれた後、ミョルニルはトールの息子マグニに発見されたのでした。


現在でもミョルニルを模した槌が、北欧各国の結婚式などで儀式に使われるそうです。ミョルニルを持つトールは豊穣の神とされることもあり、ミョルニルは転じて子孫繁栄の象徴ともされるのだそうです。
ミョルニルのレプリカは、今でも北欧各国の宝石店の人気商品なのだそうです。

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